こんにちは。
愛知・岐阜で注文住宅とリフォームを手がける工務店、丸共建設株式会社の広報スタッフです。
筑波大学の柳沢正史教授は、脳内で覚醒の維持に重要な働きをする「オレキシン」を発見した、世界的な睡眠研究者です。柳沢教授が2026年9月、スタンフォード大学のエマニュエル・ミニョー教授とともにアメリカの医学界で権威ある「アルバート・ラスカー基礎医学研究賞」を受賞されました。
前回のブログ「ラスカー賞受賞の柳沢教授ご自宅から考える。照明と家の心地よさ」では、睡眠学者・柳沢正史教授のご自宅をヒントに、夜の暮らしに合わせて、必要な場所に必要な光を置くことの大切さについてご紹介しました。
今回は、その続編として柳沢教授に学ぶ「睡眠」についてお届けしたいと思います。
夜、どんなふうに過ごしていますか?

家族で食事をしたり、テレビを見たり、スマートフォンを触ったり。
一日の終わりをどのように過ごすかは、ご家庭によってさまざまだと思います。
仕事や習い事、家族との時間など、毎日の生活にはいろいろな事情があります。
そんな中で、時々気になることがあります。
夜遅い時間に、まだ小さなお子さんが外で過ごしている姿を見かけることです。
大人にとっては楽しい時間でも、子どもにとっては、そろそろ眠る時間かもしれません。
もちろん、それぞれのご家庭にそれぞれの事情があります。
だからこそ、「早く寝なければ(寝かせなければ)」とだけ考えるのではなく、**人間にとって睡眠とは、どんな時間なのだろう?**ということを、今回は考えてみました。
そもそも、私たちはなぜ眠るのでしょう?
睡眠について調べていると、とても興味深い話に出会います。
睡眠学者・柳沢正史教授のお話では、実は「なぜ私たちは眠るのか」という問いには、まだ完全な答えが出ていないそうです。
人間だけでなく、さまざまな動物が眠ります。
脳を持たないクラゲにも、睡眠に似た状態があるそうです。
「眠る」ということは、私たちが思っている以上に、生き物にとって大切な仕組みなのかもしれません。
では、眠っている間、私たちの体や脳では何が起きているのでしょうか。
眠っている間、私たちは外からの刺激に反応しにくくなります。
そして、その時間には、私たちが普段気づいていない大切な働きがあるようです。
睡眠には「記憶を整理する時間」という役割も
睡眠には、大きく分けて「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があります。
夢を見ることの多いレム睡眠と、深い眠りに入るノンレム睡眠。
それぞれに異なる役割があると考えられていますが、そのひとつが記憶の整理です。
起きている間に経験したことや学んだことを、眠っている間に整理していると考えられています。
「勉強したから眠る」のではなく、眠ることもまた、学んだことを身につける時間。
そう考えると、「勉強するために睡眠時間を削る」ということが、必ずしも良い方法とは限らないことが分かります。
例えば、一晩徹夜するだけでも、脳の働きは低下します。
さらに興味深いのは、睡眠不足が続いても、本人はその能力低下に気づきにくくなることがあるということ。
「最近寝不足だけど、慣れたから大丈夫」と思っていても、実際には判断力や集中力などに影響が出ている可能性があります。
「睡眠の質」
ところで、「睡眠の質を高める」という言葉を耳にします。
質を高めるために寝具を変えたり、寝室の環境を整えたり、さまざまな工夫をされている方もいるのではないでしょうか。
ところが、柳沢教授のお話では、「睡眠の質で一番大事なのは量」という考え方です。
まずは、自分に必要な睡眠時間を確保する。
そのうえで、どうすれば気持ちよく眠れるかを考える。
順番としては、こちらが基本となるそうです。
どれくらいの睡眠が必要か。

必要な睡眠時間には個人差があり、年齢によっても変わります。
「必ず○時間寝なければならない」と一律に決めるのではなく、十分に眠ったときに自然に目が覚めるか、日中に強い眠気がないかなど、自分の状態を知ることも大切です。
年代別の睡眠時間の目安
- 1~2歳:11~14時間
- 3~5歳:10~13時間
- 小学生:9~12時間
- 中学・高校生:8~10時間
- 成人(18~64歳):6~9時間程度
- 65歳以上:必要な睡眠時間は徐々に減少し、およそ6時間が目安
(あくまで目安であり、必要な睡眠時間には個人差があります。)
特に成長期の子どもは、大人よりも長い睡眠時間が必要です。
また、思春期になると夜型になりやすく、「夜なかなか眠れない」「朝起きるのがつらい」ということもあります。
「これくらいで足りるだろう」と思っていても、実は睡眠が足りていないこともあります。
年齢や生活に合わせて、自分に必要な睡眠時間を確保することが大切です。
※睡眠時間の目安については、アリナミン製薬「健康サイト」を参考にしています。
睡眠は「住宅ローン」に似ている?
平日に睡眠時間を削って、週末に長く眠ることで、ある程度取り戻すことはできます。
ただ、週末の2日間だけで、すべてを帳消しにできるとは限りません。
睡眠は「貯金」することはできず、足りなかった分をあとから返している、と考えると分かりやすいかもしれません。
住宅ローンは、一度にまとめて返すのではなく、毎月少しずつ返していくものですよね。
睡眠も同じように、普段から必要な睡眠時間を確保しておくことが大切なのだそうです。
気持ちよく眠る
必要な睡眠時間を確保したうえで、次に考えることが睡眠環境です。
睡眠中の環境は、「暗く、静かで、暑すぎず寒すぎないこと」が大原則です。
そして、毎日できるだけ同じような時間に眠り、起きること。
朝はカーテンを開けて明るい光を浴び、夜は明るい光を避ける。
とてもシンプルですが、毎日の生活の中で意識してみる価値のあることです。
ここで、前回のブログでご紹介した「照明」の話にもつながってきます。
夜の家は、少しずつ暗くしていく

夜になっても、家の中が昼間と同じように明るいままだと、なかなか「一日の終わり」を感じにくいものです。
夜8~9時頃からは、できるだけ「明るい」と感じないくらいの照明にしていくことが、眠りに向かう環境づくりのひとつだそうです。
実際に日本の照明は、海外の人から見ると「明るすぎる」と感じられることもあるそうです。
ホテルなどでも、海外からのお客様から「部屋の照明が明るすぎる」といった声が聞かれることがあるといいます。
私たちにとっては「普通」と思っている明るさも、国や文化が変われば、感じ方は違うのかもしれません。
日本の住宅では、部屋全体を天井の照明で明るくすることが多いですが、夜は必要な場所だけを照らすようにしてみます。
リビングで過ごす時間も、勉強や作業をするときは手元を明るくし、くつろぐ時間には少し照明を落とす。
そんなふうに、夜の家を少しずつ「眠りに向かう場所」に変えていくことも、睡眠を考えるうえで大切なのかもしれません。

「寝る前のスマホ=絶対NG」ではない?
睡眠について調べていると、スマートフォンの話も避けて通れません。
寝る前のスマホは良くないと聞きます。
ところが、柳沢教授のお話を聞いていると、少し違った見方もできるようです。
最近のスマートフォンは、夜になると画面を暗くしたり、色味を変えたりする機能があります。
そのため、単純に「スマートフォンのブルーライトが悪いから、寝る前は絶対に見てはいけない」という考え方には、科学的な根拠が十分ではないとのこと。

むしろ気をつけたいのは、「スマートフォンで何をしているか」。
ゲームやSNS、チャット、次々と流れてくるショート動画など、つい夢中になってしまうものは、眠る時間そのものを後ろへずらしてしまうことがあります。
一方で、落ち着いた動画を眺めたり、眠る前の習慣としてスマートフォンを使ったりすることもあります。
柳沢教授ご自身も、寝る前に将棋の解説動画を見ることがあるそうです。
「スマホは絶対にダメ」と決めつけるのではなく、自分が眠る前にどんな使い方をしているのかを考えてみる。
それも、睡眠を考えるうえでは大切なのかもしれません。
子どもにとって、眠る時間はもっと大切
子どもの睡眠についても考えてみたいと思います。
成長期の子どもは、大人とは必要な睡眠時間が異なります。
また、思春期になると体内時計が夜型へ変化することがあり、「夜なかなか眠れない」「朝起きるのがつらい」ということが、単純に本人の意志や怠けだけでは説明できない場合もあります。
子どもの生活を考えるとき、
「もっと勉強させなければ」
「もっと習い事をさせなければ」
と考えることはあっても、
「ちゃんと眠る時間を確保できているかな?」
と考えることは、案外少ないかもしれません。
睡眠は、勉強や遊びの「余った時間」にするものではなく、毎日の生活そのものを支える時間です。
子どもとの暮らし方を考えるとき、睡眠時間のことも一緒に考えてみてもいいかもしれません。
睡眠を考えると「家」が見える
ここまで睡眠について考えてみると、ひとつのことに気づきます。
睡眠は、寝室だけの話ではありません。

朝、どんな光が入ってくるのか。
夜、家の中はどれくらい明るいのか。
家族が寝る前にどこで過ごすのか。
テレビやスマートフォンをどこで使うのか。
静かに眠る場所があるのか。
そう考えると、家は単に「暮らすための場所」だけではなく、「眠るための場所」でもあるということです。
一日の疲れをほどき、心と体を休ませ、また次の日を迎える。
その大切な時間を過ごす場所が、家なのです。
家づくりでは、間取りやデザイン、収納、性能など、さまざまなことを考えます。
それらはどれも大切ですが、「この家で、夜はどんなふうに過ごすのだろう?」というところからも、考えてみてください。

朝起きて、夜眠る。
当たり前の毎日が、心地よい家。
家族が安心して過ごし、自然と眠りへ向かうことのできる家。
眠るための大切な場所としての「家」。
丸共では、そんな毎日の暮らしまで想像しながら、住まいについて考えています。
もっと知りたい方へ
今回ご紹介した柳沢正史教授の睡眠のお話は、まだまだ興味深い内容がたくさんあります。
「もう少し詳しく知りたい」という方は、ぜひこちらもご覧ください。
【本で読む】

『世界最高の睡眠学が教える 睡眠の正解』
柳沢 正史 著
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『快眠法の前に 今さら聞けない 睡眠の超基本』
柳沢 正史 監修
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