
一見、平らに見える土地でも、建築には“整える”ひと手間が必要なことがあります。
「いい土地」ほど、見えないコストに気づきにくいことも。
家づくりを考えるとき、多くの方がまず最初に探すのが「土地」です。
陽あたりがよく、周囲の環境も静かで、なんとなく雰囲気が良い。そんな土地に出会うと、心が動くのも自然なことです。
けれども、土地の価値は「見える部分」だけでは測れません。
たとえ価格や立地が魅力的でも、実際に家を建てようとしたときに思いがけない造成費がかかることがあります。
造成とは?──家が建つ“土地”を整える工事

“造成(ぞうせい)”とは、家を建てるために土地を整える工事のこと。
地面の高さを調整したり、柔らかい土を入れ替えたり、排水のための溝を設けたりといった作業を行います。
見た目は平らな土地でも、思いがけない費用がかかることもあります。
高低差・乗り入れ・元田畑──よくある3つのポイント
■道路との高低差
一見小さな段差に見えても、建築上は擁壁や盛土・切土が必要な場合があります。
擁壁を設けると数十万円~数百万円規模の工事になることもあります。
※擁壁(ようへき)は、高低差のある土地で、地面をしっかりと支えるためのコンクリートの壁のこと
※盛土(もりど)は土を「盛って」土地を高くすること
※切土(きりど)は土を「削って」土地を低くすること
■乗り入れのしにくさ
歩道の切り下げや進入角度の調整など、車両の出入り口を整備する工事が発生することがあります。
※「歩道の切り下げ」とは、道路と敷地をつなぐ出入口をつくるために歩道の縁石を低く加工することを指します。自治体への申請・許可が必要(勝手に削れません)。
■元が田んぼ・畑の土地
田や畑の黒土は雨に弱く、そのままでは家の基礎が安定しません。
黒土をすき取り、固く締まる土に入れ替えることで、ようやく“家を建てるのに適した土地”になります。
また、もともと田んぼや畑だった土地は、雨が降るとどうしても地面がどろどろになりやすく、単純に靴や車が汚れやすく使い勝手が悪いです。
この場合、表面の黒土を取って、家を建てるのに適した硬い土に入れ替える必要があります。
土地の表面の数十センチだったとしても土地全面となると、ダンプカー何杯分もの土になり、思った以上の費用や時間がかかります。

土地選びは「建てる視点」で。
こうした造成費は、土地の形や高さ、水の流れ方など、少しの条件の違いで大きく変わります。
だからこそ、土地を探すときには“建てる視点”を持つことが大切です。
土地は、購入するタイミングも大切ですから実際にはなかなか難しいのですが、可能であれば土地を購入する前に、建築会社に建てる視点での相談ができるのが一番良いです。
土地の個性をいかして、心地よい暮らしを。
とはいえ、どんな土地にも、その土地ならではの「良さ」があります。
南向きで明るい土地もあれば、木々に囲まれた静かな土地もある。傾斜があっても、そこから見える眺めや風の抜け方が魅力になることもあります。
大切なのは、出会った土地の“良いところ”に目を向けること。
その土地の個性を読み取り、最適な設計を考えることで、無駄な費用を抑えながら、その場所らしい心地よい暮らしが生まれます。
完全オーダーメイドの注文住宅の魅力は、
家族の暮らしに合わせた設計ができることと同じくらい、土地の良さを引き出す設計できることにあると私は考えています。
土地を見る目を少しだけ深く。そこから、暮らしづくりは始まります。

暮らしのアドバイザー 安江