こんにちは、代表の一木です。先日下呂市乗政にある南ひだ森林組合さまにお邪魔してきました。私たち工務店の大切な材料を供給してくれる所になりますが、なかなか知らない山や林業の実情。実は丸共建設の創業は私の祖父が林業、製材を始めたところからでした。そんなことから、改めて私たちに何ができるのか考える為に、細江組合長にお時間をいただきました。
木材の歴史
下呂市では、土地面積の92%が森林で、県下でも高山市、郡上市に続き、3番目に広い面積となっています。その中で皆さんが所有されている人工林のほどんどが杉、桧です。戦後の高度成長期を支え、薪炭材から建築用材等の目的で植えられ、広葉樹より経済的価値の高い杉や、桧等の針葉樹に置き換えられる時代がありました。「木を植えることは銀行に貯金すうよりも価値のあること」という時代もあったようで、造林ブームがおこりました。その頃は当時は下呂市にも多くの林業・製材業の会社が存在していたようです
その後、木材の需要を賄うべく、昭和39年には木材輸入の全面自由化がなされました。国産材の価格が高騰する一方、外材の輸入は国産と比べて安く、かつ大量のロットを安定的に供給できる為、年々輸入が拡大していきました。また、生活様式も和室から洋室化が進み、真壁工法の減少も日本の木材需要の低迷に繋がっています。ここ最近では2021年にアメリカで発生したウッドショックもあり、木材価格の急騰があり、大手ハウスメーカー等輸入材が入りにくくなったことで、国産材に目が向き、市場の動向に山側の仕事や供給事情もかなり振り回されるといのが現状のようです。
山・森の役割
少し話は変わり、私たちの周りにある山、森の役割とはどういったことがあるのか少し整理したいと思います。
森の8つの役割
① 様々な生物を守る
森には樹木だけでなく、草花やコケといった植物、菌類、微生物、昆虫、鳥類、爬虫類、哺乳類などの様々な動物が生息しています。
みんな生態系の中の絶妙なバランスを保って生育しているのです。このような森林を守ることは、これらの生き物や生態系を守ることにもなるのです。
② 地球温暖化を防ぐ
工業、建設など様々な産業活動や家庭生活によって、近年二酸化炭素などの温室効果ガスが増え、地球の気温が上昇していくという地球温暖化が問題になってきています。
森は二酸化炭素を吸収するので、植樹や育樹を適切に行うことにより地球温暖化を抑える働きがあります。
③ 快適な環境を作る
森は木の蒸散作用によって夏の気温を低下させたり、地球の気温の変化を緩やかにしたりする働きがあります。
また樹冠(樹木の上部で葉が茂っている部分)による、ちりやほこりの吸収や汚染物質の吸収、防音効果なども備えており、快適な生活環境の形成に貢献しています。
④ 山崩れや台風などの災害から守る
山の樹木は、地中にしっかり根を張っていて土や石をつかまえているので、土が流されないよう斜面につなぎとめる働きをしています。
山に木が生えていないと、大雨が降った時に山の土が雨で削り取られたり、土や石が流れ出して土石流となり、災害につながる可能性があります。
また山の樹木は台風や潮風など風による災害からも私たちを守ってくれています。
⑤ 水を蓄える
森の土は有機物や様々な生物によってスポンジのような構造をしているため、裸地と比べて雨水を地中に浸透させる力が約3倍もあります。
森林に降った雨は、その約半分が地下へとしみこんでいき、ゆっくりと河川に流すことができるので、洪水や渇水を防ぐことができます。また川の水の量を一定に保つ役割もあります。
また森の土にしみこんだ水は、土の中を通って行く間に浄化されてきれいになり、私たちの飲み水になどになっています。
⑥ 豊かな資源を生み出す
森林は木材のほかに、きのこ、山菜など様々な資源を与えてくれます。
これらの資源は、適切に森林を管理することにより、半永久的に繰り返し生産ができる循環型資源として私たちの生活を支えてくれています。
⑦ 安らぎを与えてくれる
森林は、美しい景色、川のせせらぎやすがすがしい空気など、人に安らぎを与えてくれます。
また精神的または肉体的ストレスがある人にとって、森林が安らぎや癒しの空間であること、また樹木が発散する揮発性物質が健康増進に効果を発揮するという実証的な研究データがあります。
このことから森林ツアーや森林セラピー、森林浴などが気分転換や健康維持に高い効果を発揮することが分かっています。
⑧ 文化伝承・教育の場として
森林の景観は日本人の自然観や伝統文化の軽視において重要な要素になっています。
また子供のころに自然に触れる体験をすれば、学びに対する意欲向上、または道徳観や正義感の形成につながるというデータもあり、教育の場としての役割も期待されています。
上記の事が、森林の多面的役割として私たちの生活とも深く関わっています。
森林組合として望まれること
まずは、皆さんに自分の所有している山を興味を持ってもらうことです。いくら身近にあっても、自分の土地だという意識もなければ、山をどう管理していくかというところにすら繋がりません。親から譲り受けた山に対して、山の境界ですら把握できずにいる方もみえると思います。その把握するところからが始まり、山の情報を整理することでも仕事が生まれてきます。林業従事者を増やし、仕事づくりができれば、山の機能を守っていくことに繋がっていきます。
L.WORKSとしてできること
今年からL.WORKSとして新ブランドをスタートさせました。沢山の資源に囲まれた岐阜県下呂市に本社を構えるからこそ、この地域での生き方に色々と考えさせられることが多くありました。人とのつながりの大切さ、自分たちで地域の暮らしを守ること、幼いころからの原体験から今の暮らしの環境の変化など。
私たちは住まい、建物を建築し、商売をしていく事で成り立っています。そこに町(春日井)とのつながりを生みだしていくことで、人や、物の行き来が生まれます。それが下呂の山で採れた飛騨杉や、東濃桧等利用頂ける機会を生み出せればより下呂の山も活気づくのではないでしょうか。
また「地材地建」から地域の自然環境を守り、地域の材料を地域の職人さんたちに作ってもらうこと。それがきっと私たちの住んでいる地域にもより良い暮らしが生まれていくのではないでしょうか。小さい企業の小さな力ですが、少しずつでも何かが変われば、新しいものや、価値も生まれ、それに興味を持った人も集まり、良い循環が生まれていくと思います。少しでも多くの方に共感いただけるよう、様々な形で発信していきたいと思います。
その1つが10月27日、11月23日に出店するアートディスカバリーです。是非多くの方のご来場お待ちしています。大切な事を考えさせられた良い時間でした。南ひだ森林組合の皆様有難うございました。
代表取締役 一木 伸太郎